「マイケル。お前、新婚初日に嫁さんを泣かすとは何をしているんだ」
「昨日婚儀を挙げたばかりなのよ? しかもあれだけあなたに夢中だったステファニーちゃんが家を出るなんて、一体何をしたのよ」
「兄さん、何してんの? 喧嘩するにしても早すぎるだろ」
「兄様、新婚早々妻を泣かせるなんて最低ですわ」

 これも予想どおり、本邸に私の味方は存在しなかった。

 泣き腫らした目で現れたステファニーに、親族一同驚きながらも事情を聞いたけれども、彼女は「自分が悪い」の一点張りで、何も言わなかったらしい。

 しかし、昨日あれだけ幸せそうに笑っていた可愛い花嫁が、翌朝に肩を震わせながら泣いているその悲壮な姿に、スマイル侯爵家一同は驚き、マクマホン侯爵家一同は私への怒りを溜めに溜めていたようだ。

「……あの、彼女は」

「こんな状態で兄様に会わせる訳ないでしょう? まずは反省よ、反省」
「マイケル、何をしたのかこの場でハッキリ言いなさい。あれだけあなたに激甘のステファニーちゃんが家を出るなんてよほどのことよ」
「お兄様。あんなに素直で可愛くて美人で気立のいいお嫁さんの、一体何が不満なの。不満に思える程、お兄様は立派な人間なの?」

 母と二人の妹の怒りに、私は小さくなるばかりだ。
 最初は一緒に怒っていた父と弟達まで、その勢いにたじろいでいる。

「はぁ〜〜〜? 初夜に『お前を愛することはない』ですってぇ!?」
「女の敵。いえ、人類の敵。最低よ、こんなのがお兄様だなんて恥ずかしい」
「マイケル、こうなったら死んでお詫びするしかないわ。お母様も後を追うからね」
「お母様待って! 死ぬのはこのバカ兄貴だけでいいわ!」

「私が死ぬのは確定事項なのか……」