さて、実家に帰ると言っても、そう簡単にはいかない。


 何しろ、私の家は当然ながら、侯爵領にあるのだ。

 侯爵は国にとって主要な領地を治める仕事を担う。国境付近の領地を持つ場合、辺境伯と呼ばれることもある存在で、その領土は基本的に広い。

 要するに、広大なマクマホン侯爵領にある私の別邸から、広大なスマイル侯爵領のステファニーの実家に帰るということは、結構な距離の旅路となる。
 まあ、マクマホン侯爵領とスマイル侯爵領は比較的近いので、馬車で片道10日といったところだろうか。

 ともあれ、それだけの日数がかかる場所にすぐに帰れるはずもなく、今日の彼女の行き先は予想どおり、私の両親の住む本邸だった。


 そこには、昨日の婚儀に出席したステファニーの両親達が泊まっているのである……。