「どかせばいいんじゃありませんこと? 男性である旦那様の方が力が強いのですから」
「そんな透け透けの格好の女性に触れるか!」
「妻なのに?」
「だ、だから私は、お前を愛することはないと……!」

 初心な様子で、けれどもわたくしをはっきりと拒絶する旦那様の様子に、わたくしはハッと息を呑みます。
 わたくし、事ここに至ってようやく、壮大な自分の勘違いに気がついてしまったのです。

 わたくしは恥ずかしいやら罪悪感やらで、ついポロリと一筋の涙をこぼしてしまいます。

「ス、ステファニー?」
「……ごめんなさい。わたくし、色々と思い違いをしていたようです。旦那様の――マイケル卿のおっしゃること、承知いたしました」
「えっ?」

 わたくしは素早く彼から離れると、ガウンを羽織ってベッドから離れました。

「今まで大変申し訳ございませんでした。離縁でも白い結婚でも愛人でも、全て受け入れます。今後はできうる限り、視界に入らないようにいたしますわ」
「な、え、あの、ステフ……」
「無理に愛称で呼ぶ必要はございません。わたくしは自室に下がります。これからのことは手紙で命じてください。それでは」

 わたくしはカーテシーで一礼すると、それはもう目にも留まらぬ速さで内扉を通って自室に戻り、自室側から鍵をかけました。

 わたくしったら、なんてことでしょう。

 今までこんな恥ずかしい勘違いをしていたなんて、穴があったら入りたいくらいです。