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 その後、その日のうちの就職を諦めたさぎりは宿を取ろうとしたけれども、それも一苦労だった。
 火傷の痕を見た宿の者達は、うつる病気ではないかと、さぎりを宿から追い出してしまうのだ。
 うつる病気ではないと納得してもらったとしても、動物連れの宿泊というだけで断られることもあった。

(まさか宿まで取れないなんて)

 仕方がないので、さぎりは袖頭巾と手袋を買い、火傷を隠しながら、子狐を鞄に隠し、宿を取った。
 相部屋ではなく個室を取ったから、子狐のことはばれないだろう。

 部屋に着き、子狐を鞄から出すと、なぜか子狐が悲しそうに涙をぽろぽろと流し出した。

「子狐ちゃん!?」
「……」
「痛いところがあるの? おなかがすいたの?」

 ぷるぷると頭を振る子狐は、ただただ、しくしくとその場で泣いている。
 その場に狐火が出たり消えたりしているのは、子狐が、暴走しそうになる異能の力を必死に抑えているからのようだった。どうやら、この子狐も、狐火を使うことができるらしい。
 人間以外にも異能の力があるとは知らなかったけれども、あの萩恒(はぎつね)家にいた狐なのだし、そういうこともあるのだろう。

「もしかして、宿を断られたこと、気にしてるの?」
「きゅーん……」