地下部屋はこぢんまりとした六畳の部屋だった。
 そこでしばらく生活できるよう、井戸水を引いた手洗い場があり、物資が積まれ、奥に扉の奥には便所も付いている。
 だかしかし、狭い。

「さぎり! やー! おかぁしゃま!」
「希海様、大丈夫ですよ」
「おかぁしゃま! やぁあー!」

 母を思って泣き叫ぶ希海を、さぎりは笑顔で宥めながら、狐火封じの玉を使い、次々に現れる狐火を収めていく。

 希海に付き添ってこの地下部屋に逃げ込んだのは、さぎりだけだ。
 物資の少なさや部屋の狭さもあるが、そもそもここに隠れていても、助かるかどうかは分からないからだ。

 美月が妖怪を倒しきれず、ここも襲われるかもしれない。

 そして何より、狐火封じの石の力が足りず、希海の狐火に焼かれて死ぬかもしれない。

 だから、孤児のさぎりはすぐさま名乗りを上げ、希海に付き添った。
 さぎり以外の使用人達には、家族がいる。だから彼らは何を置いても生き残るべきだと、そう思ったのだ。