連れてこられた先は、何やら豪奢な洋風の部屋だった。
 寝台もあるので、おそらく客間なのだろう。

 この国で、これほどの調度品を誂えた洋風の部屋を用意できる者は限られている。
 馬車の中で目隠しをされたさぎりは、部屋に入れられ、目隠しの布を解かれたところで、血の気が引く思いでその部屋を見回す。そして、さぎりは、ゆっくりと寝台に向かい、子狐を毛布の上に下ろした。

「子狐ちゃん、まだ苦しい?」
「きゅん……」
「ごめんね。なんとかここから逃げるからね」

 そう言って子狐の毛を撫でる。
 視界にあの香り袋はない。しかし、どこか近くに置いてあるのか、室外に持っている官憲達がいるからなのか、子狐は相変わらず、体調が悪そうに静かにしていた。