え、なんで2人きり?

他の社員さんは?

2人で飲んでたの?


それか2人だけ先に上がって、彰人は桃田さんを駅まで送る途中とか?

でもなんで彰人??



……ダメだ、パニック過ぎて他にどんな可能性があるか全然思い付かない。




「いやいや、」


「須崎さんと私が黙ってれば絶対バレませんから、何も心配することないですって!

ほら、こっちですっ」




すると桃田さんはぎゅっと彰人の腕に自分の腕を絡めて、引っ張りながらどこかへ連れて行こうとする。



ちょっ…!

どこ行くつもり…!?


桃田さんほんとに積極的過ぎない!?




混乱して何も分かんないけど、まずい状況であることは間違いないはず。


私も慌てて声を掛けようとした

その時。




「…え?」




ブゥンと彰人達のそばで一台のタクシーが停まる。


周りにタクシーを呼んでる人はいないっぽいけど…。



呆然としていると、タクシーの運転席からドライバーが出て来て彰人を見るなりぺこりと会釈した。




「須崎様でしょうか?」


「はい、ありがとうございます。すぐ乗りますからちょっとだけ待っててもらえますか?」


「かしこまりました」




そうしてまた運転席に戻るドライバー。

私と桃田さんは彰人に視線を戻した。



つまり……彰人が呼んだってこと?

なんだ、タクシー呼んでたんだ…。