……いやいや、ちょっと待って。


彼女、本気…?

私今……正々堂々と略奪宣言されてる?




「あ、彰人は渡さないよ!? ていうか他の子に絶対なびかないし!」


「私が落とせなかった人はいないです。須崎さんも男ですし、“絶対”なんて有り得ませんよ」




……そう…だけど。


ていうか、とんでもない自信だな…。

こんだけ可愛かったらそうなるのも全然分かっちゃうけどさ。




「全力で誘惑して関係持って付き合ってみせますので。
本当にすみません、加屋さん」


「…ダメ! やだ、絶対やめてよ!」


「須崎さんに釣り合うのは加屋さんより私だってきっと皆思ってますし、加屋さんも少しは思ったことありますよね?」



じっと探るように見つめられて、思わずゴクリと唾を飲み込んでしまう。


……まぁ……思ったことないと言ったら……嘘になるけど。




「とにかく、加屋さんは大人しくしてて下さいね」


「ちょっ、」


「私と寝たら、もう須崎さんは私のこと忘れられなくなると思いますよ♡」




オーッホッホと笑いだしそうな桃田さんは、まるで少女漫画に出てくるライバルキャラのようで。

私に言えてスッキリしたのか、ルンルンとした足取りで自販機の前へ歩いて行った。



…は、腹立つぅ〜〜!

なんで彼女である私がこんなに言われちゃってんの!?


ていうか……私がしてた妄想がそのまま現実になってるし!



でもどうしよう……桃田さんは本気だ。

ほんとに桃田さんが彰人を全力で誘惑しちゃったら……断れる?

断れない人がいる?



あぁ不安だ……果てしなく不安だ……。


彰人ぉ……


……お願いだから揺らがないで…。