「あ、ごめんちょっと出てくる」
彰人はそう言うと、携帯に耳を当てながら休憩室を出て行ってしまった。
えぇっ……そんな……。
彰人がいなくなっちゃったら、私と桃田さん2人っきりになるんだけど……。
「……」
「……」
き、気まずい。
ていうか私はもう休憩し終わったし、先に戻っててもいいよね?
そう思って口を開きかけたその時。
「加屋さん」
突然名前を呼ばれて、ドキィッと心臓が跳ねる。
桃田さんは相変わらず私をじーっと見つめていて、何を考えているかは分からない。
「はい…」
「須崎さんとどうやって付き合ったんですか?」
真ん丸なおめめが私を捕らえて放さない。
私は獲物の如くビクビクしてしまう。
……って、なぜそんな質問を…?
「どうやってって……普通に、気が合って仲良くなって……」
「そうですか。須崎さんも同じようなこと言ってました」
「…はあ」
「あの、加屋さんには申し訳ないんですが」
「?」
「私、須崎さんが好きです」
………………え。
え、ええ??
「……はい!?」
「今カノである加屋さんにこんなこと言うの失礼なのは分かってます。
でも、須崎さんは私の理想そのものなんです」
唖然とする私を置いて、桃田さんはスラスラと言葉を続けていく。
「今までこんな理想に合う人に出会ったことなくて……。
だから私、何がなんでも須崎さんと付き合いたいんです」
「……」
「泥棒猫でもクソ女でもなんとでも呼んでください。事実なので」
ニッコリと笑う桃田さん。
なんだかその笑顔が、めちゃくちゃ可愛いのに不気味に思えてゾッとしてしまう。


