好意を持ってくれるのは嬉しいけれど、自分に自身がなくなっていく一方だ。
「あの子たちはああやって騒ぎたいだけ。本気で俺と付き合いたいなんて思ってないよ」

「そ、そうでしょうか……」
ほとんどの子たちがファン心理で騒いでいるだけだとしても、中には本気で恋をしている子だっているかもしれない。

「だいたい。本気で好きだったらいつまでも告白せずに待ってるなんてことはないと思うよ」
一樹はそういうと残っていたビールを一気に飲み干した。

「告白、されないんですか?」
「全然されない」

ため息交じりに言葉を吐き出す一樹はどこか哀愁が漂っている。
「きっと、小野木さんがカッコイイからみんな告白する勇気がないんです」

「告白する勇気はないけど、ひとりでランチを食べているときに俺を取り囲む勇気はあるってわけだね」