初恋婚〜幼馴染のエリート同期と離れられなくなりました~

あのときのことは今でもよく覚えている。
引っ越すことが辛くて悲しくて、胸に深く刻み込まれてしまっている。

だけど俊介の一言で泣き止んだ自分を強欲だったなぁと感じる。
「あの時『またね』って言ったんだよな。本当にそのとおりになった」

笑う俊介に優莉奈の記憶はあの日の細部までを思い出す。
そう、ふたりして『またね』って言った。

バイバイは言わなかったんだ。
それは幼いふたりの意地でもあったかもしれない。

「ちょっと、いいかな?」
昔話しに花を咲かせていると、後ろから一樹が声をかけてきた。

手には半分ほどビールの残ったグラスを持っている。
きっと俊介と話がしたいのだろうと思って、優莉奈は席を立った。

優秀な人間同士馬が合うかもしれない。
「どうぞ」