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最初に異性と付き合ったのは高校生の頃だった。
優莉奈は高校2年生で、相手は高校3年生だった。

3年生の中でも特にかっこいいと噂の先輩で、サッカー部のエースだった。
背が高く、足も早くて、サッカーをしている姿を見学する女子生徒も沢山いた。

先輩がボールをゴールへ向けて蹴るたびに、周りからは黄色い悲鳴が聞こえてくるほどだった。

そんな先輩に声をかけたのは優莉奈の方からだった。

『あ、あの先輩!!』
放課後の昇降口、先輩が教室から出てくるのを待っていた優莉奈は首尾よく声をかけることに成功した。

すごく緊張したけれど、友達相手に何度も練習してきたから声が裏返ることもなかった。

この頃には3年生は部活を引退していたから、先輩が真っ直ぐ帰ることは知っていた。
だから優莉奈は自分のクラスの帰りのホームルームが終わると、真っ先に教室を飛び出してここまで走ってきたのだ。

おかげで息は切れて髪の毛は乱れていたけれど、先輩はにこやかに『君、いつもサッカー部の練習を見に来てくれてた子だよね?』と、答えてくれた。

優莉奈は先輩が自分のことを覚えてくれていることが嬉しくて、それだけで顔が真っ赤に染まった。