俊介がデート中に間違えて優莉奈の名前を呼んだ。
それは梓の気持ちを決定づけるものになった。

『ごめんなさい。私から声をかけたけれど、やっぱりちょっと……』
数日後にはそう言って振られてしまったらしい。

当然といえば当然のことだった。
優莉奈だって付き合っている相手が別の女の名前を呼んだら別れを考えると思う。

「フラれたにしては元気ですよねぇ?」
マイちゃんがリップを直しながら呟く。

「そう落ち込んでもいられないでしょ。仕事が忙しくなってるんだし」
優莉奈はなんとなくでそう返事をしておいた。
実際は俊介の気持ちなのでなんともわからないけれど。

「そうですかねぇ? そもそもおふたりは本当に相思相愛だったんですかね? 少なくても和嶋さんの方はお酒うんぬんの時点でダメっぽかったしぃ」

それはそうかもしれない。
付き合うか付き合わないか。

好きかどうかの瀬戸際にいてわからないから、一旦距離を縮めてみた。
それで違ったから離れた。