それは夏も終わりが近づき始めた9月下旬のことだった。
もみじのような小さな手が互いの手をギュッと握りあい、トテトテと音を立てて歩いていく。

舗装されていた道はやがておわり獣道へ差し掛かるとき、前を歩いていた足が一旦とまった。

「優莉奈ちゃん大丈夫? こわくない?」
振り返り、拙い言葉で相手をいたわる。

優莉奈と呼ばれた女の子はコクンとひとつ頷いた。
本当はこの先へ進んでいくのが少し怖かったけれど、男の子と一緒なら平気だった。

「じゃあ、行くよ」

前を行く男の子が優莉奈の手を握り直してまたトテトテと歩き出す。
優莉奈はそれに必死についていくだけだった。

やがて短い石段が見えてきた。
「ついたよ!」
男の子の声に優莉奈の顔に笑顔が咲く。

たった3段しかない石段の上には石の鳥居がどっしりと佇んでいる。
ふたりは鳥居の前に立ち、1度お辞儀をして境内へと足を踏み入れた。

そこは縁結びの神様として有名な場所であり、地元に暮らす5歳のふたりもそのことを知っていた。

「縁結びの神様。僕を優莉奈ちゃんのお婿さんにしてください」
「縁結びの神様。私を俊介くんのお嫁さんにしてください」