アルコールで火照った体に、10月の空気が心地いい。


「次はどこへ行こうか?」


今まで仕事の話と料理の感想ばかり言っていた安田が、不意に澄恵の手を握り締めて聞いてきた。


「えっ?」


澄恵は咄嗟には返事ができない。


アルコールで、頭の回転も遅くなっていた。


安田と同じように立ち止まり、少しぼーっとする頭で今の状況を整理する。


(あれ? 今私、安田くんにデートに誘われた?)


その事実を理解している間に「別れるなんて嫌!!」と、悲痛な叫びが夜の街にこだました。


澄恵と安田はハッと息をのんで声がした方へ視線を向ける。