「え? えぇっ? せ、世良先輩?」
真っ先に声を上げたのは、芽生だった。
「コレ、3人の誰かが落としたんじゃないかな?」
そう言って先輩が私達に差し出したのは、白い生地に花の刺繍が施されているハンカチ。あれは、間違いなく私のだ。
「す、すみませんっ。それ、私のですっ」
私のハンカチを持つことで、いつまでも先輩の腕を上げさせるわけにはいかない。そう思い、先輩に駆け寄ると柔らかい笑みを浮かべていた。
「はい。気をつけなよ、天野さん」
「あ、ありがとうございま……えっ」
どうして、名前を知ってるんですか。そう
聞こうとしたが、先輩はもう学校に向かって歩いていた。
「ね、ねぇっ! 甘奈っ。先輩、今……天野さんって言ったよね? 学年も違うし、話したことなんてないのに」
芽生が、驚いて目を丸くしながら言った。驚いたのは、私もだ。
あんな夢を見たのは、もしかして先輩と何かあるのかも……なんて、期待をしたのも口には出さない秘密。
〜完〜