【書籍1巻発売&コミカライズ進行中】悪女の汚名返上いたします!

 王妃はひとしきり高笑いした後、目尻の涙を拭いながら侍女に(ふん)した部下をねぎらう。

「やはり諦めたのねぇ。もう引き上げて構わないわ。今まで潜入ご苦労さま」

 密偵は恭しく一礼すると、足音もなく部屋を出ていった。
 
 王妃はひとりテラスで優雅にカップを傾けながら、庭を眺めつつ物思いにふける。

(夜会でわたくしに言い返してきた時は少々驚いたけれど、やはり無理だったようね)

 フェルナンが「俺の婚約者にしたい」と言って連れてきた時から、王妃はセレーナのことが気に食わなかった。

 誰になにを言われても、背中を丸めてうつむき反論せず「すみません……」と謝るばかり。
 見るからに気弱で頼りなく、上に立つ者としての威厳に欠ける。

(あの娘は王太子妃にふさわしくないわ。陰気そうで、なにを考えているのか分からないところも不気味)

 愛する息子に「セレーナは心根の優しい娘なのです。どうか寛大なお心で見守ってやってください」と懇願されたため、頭ごなしに反対はせず、この数ヶ月間は様子を見ながら辛抱したが……。

 待てど暮らせど変化の兆しは見られなかった。