王妃はひとしきり高笑いした後、目尻の涙を拭いながら侍女に扮した部下をねぎらう。
「やはり諦めたのねぇ。もう引き上げて構わないわ。今まで潜入ご苦労さま」
密偵は恭しく一礼すると、足音もなく部屋を出ていった。
王妃はひとりテラスで優雅にカップを傾けながら、庭を眺めつつ物思いにふける。
(夜会でわたくしに言い返してきた時は少々驚いたけれど、やはり無理だったようね)
フェルナンが「俺の婚約者にしたい」と言って連れてきた時から、王妃はセレーナのことが気に食わなかった。
誰になにを言われても、背中を丸めてうつむき反論せず「すみません……」と謝るばかり。
見るからに気弱で頼りなく、上に立つ者としての威厳に欠ける。
(あの娘は王太子妃にふさわしくないわ。陰気そうで、なにを考えているのか分からないところも不気味)
愛する息子に「セレーナは心根の優しい娘なのです。どうか寛大なお心で見守ってやってください」と懇願されたため、頭ごなしに反対はせず、この数ヶ月間は様子を見ながら辛抱したが……。
待てど暮らせど変化の兆しは見られなかった。
「やはり諦めたのねぇ。もう引き上げて構わないわ。今まで潜入ご苦労さま」
密偵は恭しく一礼すると、足音もなく部屋を出ていった。
王妃はひとりテラスで優雅にカップを傾けながら、庭を眺めつつ物思いにふける。
(夜会でわたくしに言い返してきた時は少々驚いたけれど、やはり無理だったようね)
フェルナンが「俺の婚約者にしたい」と言って連れてきた時から、王妃はセレーナのことが気に食わなかった。
誰になにを言われても、背中を丸めてうつむき反論せず「すみません……」と謝るばかり。
見るからに気弱で頼りなく、上に立つ者としての威厳に欠ける。
(あの娘は王太子妃にふさわしくないわ。陰気そうで、なにを考えているのか分からないところも不気味)
愛する息子に「セレーナは心根の優しい娘なのです。どうか寛大なお心で見守ってやってください」と懇願されたため、頭ごなしに反対はせず、この数ヶ月間は様子を見ながら辛抱したが……。
待てど暮らせど変化の兆しは見られなかった。



