【書籍1巻発売&コミカライズ進行中】悪女の汚名返上いたします!

「喧嘩しても時間を浪費するだけです。まずは冷静に話し合いましょう」
 
 焦げ茶色の短髪に、そばかすの散った人懐っこい笑顔がトレードマークの彼は、にらみ合うベアトリスとフェルナンの間に立ち、やんわりと仲裁に入ってくれた。

 冷静さを取り戻したフェルナンが、仕切り直して話を再開する。

「もし犯人を逮捕できれば、大手柄だ。お前とバレリー卿に恩赦を与える大義名分が立つ。もし議会で貴族らが反対しようとも、はね除けることができるだろう」

「犯人逮捕は、私にとっても利益があるということですね」

「そうだ」

 ベアトリスは瞬時に考えを巡らせた。

 自分はお優しい人間じゃないから、他者のためにタダ働きはしない。
 だが、こちらにもメリットがあるというのなら話は別。やる価値は十分にある。

「ではその件、お受けいたします。ただし、私ひとりじゃさすがに無理ですわ。ユーリスとポールを貸してください」

「分かった。俺自身は手伝えないが、人手を貸すくらいは母上も大目に見てくれるだろう」

 フェルナンに目配せされた騎士ふたりは、『承りました』とそれぞれ一礼した。

「やると決めたからには全力で犯人逮捕してみせますわ!」

 闘志をみなぎらせるベアトリスはその時、目先の問題解決に夢中で見ていなかった。


「わたしは、いつも、守られてばかり……なにもできない、役立たずね……」

 
 鏡の中のセレーナが悲しげな顔でうつむき、陰鬱に呟いていたのを──。