【書籍1巻発売&コミカライズ進行中】悪女の汚名返上いたします!

 助けを求めるようにベアトリスが視線をさまよわせれば、視界の端にユーリスの姿が映り込んだ。

 彼は、右手で自分の胸をトントンと叩いている。
 
 あれは──『貴女の思うままに話しなさい』という合図だ。

 ベアトリスはまっすぐ王妃を見つめると、起死回生の一手を打つべく口を開いた。

「すみ、ません」

「貴女は本当にそれしか言えないのね。はぁ、もうなにもしゃべらなくて、いい──」

「あの、すみません……王妃様の、ご命令には……従えません」

「……………………なんですって?」

 王妃が大きく目を見開き、唖然とする。

 これまで「すみません」としか言えなかった気弱なセレーナが、王妃相手に明確な拒絶の意思を示したことに、その場の人々はみな驚きのあまり息をのんだ。

「わたしは……殿下を心から……お慕いしております」

 人々が見守るなか、ベアトリスはセレーナの口調を真似しながら話した。

「殿下は、わたしをいつも励まし、心の支えになってくれた、大切な御方です。ですが、わたしはまだ……そのご恩を、返せておりません……」

 王妃は目を細め、品定めするようにこちらを眺めている。
 
 ベアトリスは、ものすごい威圧感で萎縮しそうになるのを必死にこらえ、演技を保ったまま言葉を続けた。