【書籍1巻発売&コミカライズ進行中】悪女の汚名返上いたします!

 恋人を賞賛するフェルナンと謙虚にふるまうセレーナ。

 ふたりのやりとりを眺めながら、ベアトリスは密かに苦い気持ちになっていた。

 
 昔からセレーナを見ていると、なぜか無性にイライラする。
 
 ずっとその理由が分からなかったが、今この瞬間、ようやく気付いた。

(私はセレーナに、嫉妬していたんだわ)

 虐げられても、悲しみと怒りをこらえて耐え忍び、相手を許してしまえる器の大きさ。

 威張らず、欲張らず、一歩引いて謙虚に振る舞う淑やかさ。

 素直で優しい、心の清らかさ。

 まるでベアトリスが大好きな恋愛小説の主人公みたい。
 
(私とは正反対ね)

 物語の主人公は、みなセレーナのように優しくて健気で、いつも正しい行いをする子ばかり。
 
 ベアトリスのように口下手で皮肉を言ってしまったり、間違ったりしないのだ。

(物語の役割で言えば、私は主人公の幸せを妨害する『悪役』ってところかしら。実際、(ちまた)では『悪女』って呼ばれているみたいだしね)

 自嘲気味に「ふっ」と微笑すれば、フェルナンが疑いの眼差しを向けてきた。