【書籍1巻発売&コミカライズ進行中】悪女の汚名返上いたします!

 一語一句、間違いがないかベアトリスが確認していると「……お前は、変わったな」と声をかけられた。
 顔を上げると、微笑する元婚約者と目が合う。

「そうでしょうか?」

「あぁ、変わった。以前は威張るしか能のない『お子様』だったが、随分と『したたかな女』になったじゃないか。ふっ、悪くない」

 口の片端を持ち上げて、フェルナンがニヤッと笑う。

「見直した。今のお前ならば、可愛がってやっても良いぞ?」

 言われた瞬間、ベアトリスの背中と二の腕にぞわぞわぞわっと鳥肌が立った。

「丁重にお断りいたします」

「はははっ! 馬鹿め、冗談だ。俺にはセレーナがいるからな。今更お前など相手にするわけなかろう」

(気色ワルッ! なんなの、この俺様変態男!)

 元カレ気取りの上から目線にイラッとする。ヘラヘラしたその顔面を今すぐパンチしてやりたい!

 グッと拳を握りしめて我慢していると、不穏な気配を察したユーリスが、すかさず契約書を持って近づいてきた。そして、ベアトリスにだけ聞こえる小声で囁く。