「私の刑期はあと何年だったかしら」
 
「違法魔道具使用の罪と脱走未遂が追加されましたから、残り六年半ですね」
 
「クッソ長いわね」
 
「クッソ……?」
 
「ああ、失礼。ここに来て、少々口が悪くなってしまったみたい。それで、王都に行ったら処刑されるとかじゃないわよね? 身の安全はちゃんと保証してもらえるの?」
 
「はい。万が一、貴女に身の危険が生じた際には、俺が必ず守ります」
 
 ユーリスは胸に手を当て、迷いなくそう告げた。
 
 彼はベアトリスの味方ではないが、嘘は言わない男。きっと言葉のとおり、守ってくれる……と信じたい。
 
(どうせここに居ても、私の人生はなにも変わらない。フェルナンのことは信用できないけれど、人生やり直すビッグチャンスよ。この大波、乗るしかないわ)
 
 ベアトリスは思いきって、人生の新たな一歩を踏み出す決意をした。

「分かりました。貴方と一緒に、王都へ参ります」
 
 
 断罪され追放された元聖女が、再び因縁の王都へ──。
 
 この決断が、のちに波乱をもたらし、多くの人の未来を変えることになるとは、この時のベアトリスは知るよしもなかった。