【書籍1巻発売&コミカライズ進行中】悪女の汚名返上いたします!

 ユーリスは腕組みをして壁にもたれかかると、治療が終わるのをじっと待った。

 その間、彼女の言った言葉の数々が、自然と脳裏に浮かぶ。

 ──『……わたし、素直になれなくて、ごめんなさい』
 ──『もういちど、最初からやり直せたらいいのに……』
 
 大きな瞳からぽろぽろと涙を流し、健気に「ごめんなさい」と言う姿が、まぶたの裏に焼き付いて離れない。

 思い出すたび、胸の奥が締め付けられるように切なくなった。
 
(……なんだ、この気持ち)
 
 こんな感情、自分は知らない。

 騎士服の胸元を握りしめ、息苦しさを逃すように溜息をつく。

(俺は彼女を、信じてもいいのだろうか)

 人の性格や本質は、そう簡単には変わらない。
 
 何度やり直したとしても、悪人は善人にはなれない。周囲を巻き込み、もっと深い闇に墜ちていくだけだと、ユーリスは身をもって知っている。

 ベアトリスが追放されるきっかけとなった例の呪具事件。あれには不可解な点が多すぎる。
 更に詳しく調査し、それと平行して彼女を監視する。

(彼女の無罪を信じるか否かの判断は、それからでも遅くはないだろう)

 ユーリスは、脳裏に浮かぶベアトリスの笑顔や泣き顔を振り払い、そう結論づけた。
 
 みずからの心に芽生えはじめた淡い感情に、今はまだ気付かぬふりをして──。


 ✻  ✻  ✻


 ベアトリスが目を開けると、視界に見知らぬ天井が広がっていた。
 
「あぁ、起きたわね。気分はどう?」