【書籍1巻発売&コミカライズ進行中】悪女の汚名返上いたします!

 次に坑道の出入り口を見れば、そこは土砂で完全に埋まっていた。
 
 ユーリスが助けに来てくれなければ、今頃ベアトリスたちは生き埋めになっていただろう。

 死と隣り合わせの恐怖と無事に生還できた安堵感が、今になって一気に襲ってきた。

「君は本当に無茶をする人だな。助けが間に合わなかったら、どうするつもりで……って……えっ?」

「こわ、こわかった……死ぬって、思った……」

 涙が勝手にあふれ、身体が小刻みに震えて、気づけばベアトリスはユーリスの胸にしがみついて泣いていた。

 とうに限界を超えていた心身は、感情の爆発によって最後の力を使い果たしたらしい。
 
 手足から力がごっそり抜けて、視界が暗くなっていく。

「ベアトリス! おい、誰か! 早く医者か聖女を呼べ!」

 ぐらりと傾いた身体を、ユーリスがとっさに抱き留めて叫ぶ。
 
 彼の必死な様子を見ながら、ベアトリスは『変なの』とぼんやり思った。

(私のことが、嫌いなくせに……)

 聖女見習いに腕を折られそうになった時も、最初の地震で家具の下敷きになりかけた時も。そして今回の脱出の時も、ユーリスは当たり前のようにベアトリスを庇って守り、命がけで助けてくれる。

(そういえば、ユーリスって昔から、無愛想だけど優しい人、なのよね)

 母の葬儀の日、ユーリスが傘を差し出してくれたのに……。
 セレーナへの怒りと憎しみを抑えきれず、苛立ち紛れにその手を払いのけてしまった。