【書籍1巻発売&コミカライズ進行中】悪女の汚名返上いたします!

 このままここに居たら、土砂で生き埋めになる。
 
 早く立ち上がって逃げなきゃ。早く、早く──!

 分かっているのに、眼前に迫る死の恐怖で身体が言うことをきかない。
 さらに追い打ちをかけるように、身体強化の聖魔法が完全に切れた。
 
 老人とはいえ男性ひとり分の重さに耐えきれず、バタリと倒れ込む。
 
 
 ────死ぬ。

 
 思考が絶望に塗りつぶされた瞬間、背負った重みがふっと消え、身体が一気に軽くなった。
 それと同時に、切羽詰まった男の声が耳に飛び込んでくる。

「なにしてる! 走れ!!」

 顔をあげれば、「早く!!」と叫びながらバッカスを背負うユーリスがいた。

 ドドドド──という爆音とともに、背後から土砂が迫りくる。
 
 ベアトリスは必死に走って走って、走って!
 ユーリスの背中を追いかけて無我夢中で出口を目指す。

 あと少しで外に出られると思った時、砂に足を取られて身体が傾いた。

(もう、ダメ……!)
 
 倒れ込み、諦めかけたその瞬間、ぐいっと力強く腕を掴まれ、勢いよく引き上げられた。

 ついに転がるように外に飛び出して、薄暗闇に慣れた目が太陽のまぶしさに眩んだ。

「ぅ……」

 うめき声をあげて顔をあげると、ベアトリスはユーリスに抱きしめられる形で地面に倒れ込んでいた。

「……あっ、バッカスは!?」

「無事ですよ、ほら」

 ユーリスが指し示す方向に視線を向けると、担架で急ぎ運ばれていくバッカスの姿が見えた。
 
(ああ、良かった。助かったのね……)