【書籍1巻発売&コミカライズ進行中】悪女の汚名返上いたします!

 むかしの自分ならこれくらい朝飯前だったが、今は違う。
 
 刻一刻と身体強化の効果が弱まり、一歩進むごとに背負った重みが足腰にくる。

(聖魔法が切れる前に、早く出口へ──!)

 その時、再び小さ地震が起き、ベアトリスの体がぐらりと揺れた。
 
 なんとか踏ん張って転倒は避けたが、落ちてきた鋭利な石に手足を切り裂かれ、ぽたりぽたりと地面に血が滴る。

「次の揺れが来たら、ここはもう持たん! わしのことはいいから、逃げなさい!」

「ひとりで逃げるなんて、絶対に嫌!」

「なぜ……こんな老いぼれに……」

 背中からすすり泣きが聞こえてくる。

「『諦めなければ、人生はやり直せる』、でしょう? あの時のバッカスの言葉が、私の生きる道しるべになった」

 諦めず進み続けると、薄暗い坑道の先にかすかな光が見えた。
 
 もうすぐ出口だ!

「無事にここを出てやり直すのよ、私も、バッカスも!」

 長く暗かった坑道に希望の光が差し込んでくる。

(もうすぐ、あとちょっと!)

 はぁはぁと息を切らし、必死に外を目指して一歩踏み出した、その時──上下左右に振り回されるような激しい揺れがベアトリスたちを襲った。

 出口は目の前なのに、立っていられずその場にガクリと両膝をつく。

 ひび割れた天井からパラパラと頭上から砂や小石が落ちてきて、背後で轟音がとどろいた。
 
 驚いて振り返れば、これまで歩いてきた道が土石で完全に埋まっている。

(まずい! 崩落が始まった!!)