【書籍1巻発売&コミカライズ進行中】悪女の汚名返上いたします!

 ベアトリスが心を奮い立たせていると、背後から「馬鹿じゃないの」という(ののし)りが聞こえてきた。
 
 例の聖女見習いの少女だ。

「偽善者アピール? 今更、善人ぶって、ほんとキモいんですけど」

 ベアトリスは冷ややかな目で彼女らを見ると、心底失望して言い放った。

「あの時、不合格にしておいて正解だったわ。貴女は一生、見習いやってなさい!」

「なっ……!」

 絶句する少女を置いて、ベアトリスは颯爽と駆けだした。

 バリアとともに身体強化の聖魔法をかけた体はいつもより軽く、足場の悪い坑道を難なく走り抜けていく。
 
 しばらくすると、前方にうずくまる人の姿が見えた。

「バッカス!」

 駆け寄って助け起こすと、ぐったり横たわっていたバッカスが薄く目を開いた。

「おじょう……ちゃん……? どうして、ここに……」

「助けに来たわ。もう大丈夫よ。さあ、早くここを出ましょう」

「この足じゃあ、無理じゃ……どうせ、老い先短い命……わしのことはいいから、早く逃げなさい」

「嫌よ」

 そう言ってベアトリスはバッカスを背負い、再び駆けだした。
 
 華奢な少女の力強い走りに、背後から「す、すごいな……」と息をのむ気配が伝わってくる。

「私は元聖女なのよ。これくらい余裕だわ」

 バッカスを安心させるため口ではそう言ったが、実際のところ、ベアトリスの体力と神聖力はほとんど限界に近かった。