【書籍1巻発売&コミカライズ進行中】悪女の汚名返上いたします!

 ユーリスの制止にも構わず、ベアトリスは身体強化の聖魔法を使って疾風(はやて)のごとく駆けだした。

「くそっ! あのお転婆め!」

 背後からそんな声が聞こえてきたが、立ち止まる余裕はなかった。


 ✻  ✻  ✻
 

 ベアトリスが採掘現場の入り口に駆けつけると、そこは人でごった返していた。

 人波をかき分けて進みながら、周囲の飛び交う怒号や話し声に耳をそばだてる。

「第一鉱山の方で落盤事故が起きた! 手があいている奴は来てくれ!」

(第一鉱山……バッカスが採掘に行った場所だわ!)

 急いで向かうと、坑道の入り口に山のような人だかりが出来ている。
 群衆の隙間から様子を窺うと、聖女見習いたちが、囚人たちと口論を繰り広げていた。

「だから、中に取り残されてる奴らがいるんだよ。どうか助けてやってくれ! なあ、頼むよ、聖女サマ!」

「嫌よ! 落盤事故が起きたんでしょう? 危険だわ」

「あんたら、それでも聖女かよ!」

「そうだ、そうだ! ひとを助けるのが聖女の仕事だろ!」

 ベアトリスを虐めた例の聖女見習いが「アハハッ」と嘲笑(ちょうしょう)し、囚人たちをキッと睨み付けて言った。

「わたしの仕事はねぇ、まっとうな人間を救うことよ。貴方たちのような社会のゴミ、どうなろうと知らないわ」

「なん……だって……?」

 聖女らしからぬ非情な言い草に、囚人たちは絶句し、怒りで顔を真っ赤に染め上げる。

(あの子、また人を見下して。ぜんぜん反省していないのね)