【書籍1巻発売&コミカライズ進行中】悪女の汚名返上いたします!

 内心パニックになるベアトリス。
 しかし彼はこちらに見向きもせず、真横をすーっと素通りしてクローゼットの前で立ち止まった。

 
「え…………?」
 
「貴女の妄想は分かりましたから、少し静かにしてください」

 そう言ってユーリスは至極面倒そうに、こちらに向かってなにかを投げてきた。
 広げてみると、それは大きめのシャツと男物のズボンだった。

 
「風邪を引かないよう入浴を勧めただけです。他意はありません。女物の服は持っていないんで、着替えはそれで我慢してください。新品なんで清潔です」

 淡々と事務的に説明されて、ベアトリスは「あ、はい」と大人しく頷くしかない。

(風邪を引かないようにって……私が追放された時、『失望した』って言ったくせに。今更どうして、こんな風に気遣ってくれるの?)

 嫌われていると思った相手に、不意打ちのように優しくされて戸惑ってしまう。

「急に黙り込んで、どうかしましたか」

「私が病気になったとしても、貴方には関係のない事でしょう?」

「いいえ、貴女には健康でいていただかなくては困ります。してほしいことがありますので」

「さっきから、その『してほしいこと』ってなによ……? ハッ、やっ、やっぱり、いやらしいことを……!」

「違います」