【書籍1巻発売&コミカライズ進行中】悪女の汚名返上いたします!

 恥ずかしさで真っ赤になりながら、濡れた自分の体を見下ろしてぶるりと震える。
 
 そうだった。全身びしょ濡れなんだった。

「うう、さ、さむいぃ……」
 
 思わずそう呟けば、ユーリスは「仕方ない」といった様子で、上着を脱いでベアトリスの肩にかけてくれる。

「あ、ありがとう、ユーリス」

「…………え」

 ただお礼を言っただけなのに、ユーリスはひどく驚いたように目を見開き固まった。

「…………い、いま、なんと?」

「え? ありがとう。助けてくれて、あと上着も貸してくれてありがとう。これ、洗って返すわね」

 至って普通のことを言っているはずなのに、ベアトリスが喋るたび、ユーリスの顔つきがますます険しくなっていく。

「素直に感謝するなんて、信じられない……貴女、本当にあの性格のきっついベアトリス様ですか?」

「はあ? それ以外の誰に見えるって言うのよ。というか、今サラッと悪口言ったわね」

「ああ、その高飛車な喋り方、間違いありませんね」

「ちょっと! 判断するところがおかしいじゃない! というか、貴方どうして、ここに……はぅ、はくちゅっ、くちゅん! うっ、ううぅ……」

 ぶるぶる震えるベアトリスを見下ろして、ユーリスが「説明はあとで」と歩き出した。数歩進んで、ぴたりと足を止め、こちらを振り返る。

「なにしているんです? 風邪を引きますよ、ついてきなさい」

 彼はベアトリスの返事も待たずに再び歩き出す。

(はぁ!? 高飛車なのはそっちじゃない!)