【書籍1巻発売&コミカライズ進行中】悪女の汚名返上いたします!

 ユーリスが切れ長の目をすっと細めて問い詰めれば、少女たちは動揺して視線を泳がせた。

「自身の過ちを素直に認めた方が、減点はまだ少ないと思いますよ」

 ユーリスの言う通り、この研修は見習いにとって、聖女に昇級するための重要な試験のひとつ。
 査定でマイナス評価になれば、不合格の確率は格段に高まる。

「わ、わたしは悪くないわ! この子が、ベアトリスを虐めてやろうって言い出したのよ」

「はぁ!? わたしのせいにしないでよ! 洗濯物を泥だらけにしたのは貴女じゃない!」

「そ、それを言うなら、水をかけて暴力を振るった方が悪いじゃない!」

 ひとりを皮切りに、少女たちが責任の押し付け合いを始める。

 しばらく様子を眺めていたユーリスは、ふぅと溜息をつき手を叩いた。
 
 突如として響いたパンパンッ──という音に、彼女らがハッと我に返る。

「貴女たちの教官がお待ちです。弁明は、そちらでどうぞ」

「ああ……落ちた……まちがいなく……おちた……」

 少女たちは騎士に連れられ、この世の終わりのように項垂れて、とぼとぼと去っていった。
 
 取り残されたベアトリスは、地面に座ったまま呆然とする。

(もしかして、ユーリスは私を庇ってくれたの? え、どうして? というか、なんでここに?)

 聞きたいことは山ほどあるが……。
 
 結局、ベアトリスの口から発されたのは「へくちゅん!」という、なんとも間抜けなくしゃみだった。