【書籍1巻発売&コミカライズ進行中】悪女の汚名返上いたします!

(ユーリスだって、みんなと同じように、私のことを軽蔑した目で見ているんでしょうね)
 
 孤立無援の状況に、悔しくて悲しくて、じわりと目に涙がにじんだ。
 泣き顔を見られたくなくて、慌てて服の袖でゴシゴシと目元を拭う。
 
 すると頭上から、ぶっきらぼうな声が降り注いだ。

「これ、どうぞ」

 目の前に真っ白なハンカチを差し出され、ベアトリスは思わず「へ?」と気の抜けた声を出してしまった。
 
 弾かれたように顔をあげると、昔と同じクールな澄まし顔のユーリスと視線が交わる。

 すっと通った鼻筋に、引き結ばれた薄い唇。切れ長の目は深海を思わせる群青色。
 年はたしか……ベアトリスより二、三歳ほど上だった気がする。

 元から整った顔立ちの美青年だったが、数ヶ月ぶりに会うユーリスは、少し見ないうちに精悍さが増し、凜々しい大人の男性へと変貌を遂げていた。

 彼は呆気にとられるベアトリスの手にハンカチを握らせると、見習いの少女たちに向き直った。

「先ほどの発言、偽りはございませんか?」

「えっ? えぇ、もちろんです」

「おかしいですね。通報者の証言と異なる」

「つっ、通報?」

「そうです。『白いローブを着た聖女が、寄ってたかって下働きの女性に危害を加えている』という話を聞き、私はここに駆けつけました」

「そ、そんなの嘘だわ。見間違いじゃありませんこと?」

「目撃者は複数人おります。それでもまだ身の潔白を主張しますか?」