【書籍1巻発売&コミカライズ進行中】悪女の汚名返上いたします!

「まだなにか用があるのかしら、こっちは忙しいのだけれど」

「このくらいで勘弁してやろうと思ったけど、やっぱ、やぁ~めた! ベアトリス、アンタって本当に生意気ね。もう我慢できないわ。最低最悪の悪女め、地獄に落ちろ!」

 少女は真っ赤な顔で叫び散らし、興奮し血走った目でこちらを睨み付けていた。

 あまりに憤慨した同僚の姿に、他の聖女見習いたちも困惑を隠せない。

「ねぇちょっと……顔すごく怖いわよ」

「気持ちは分かるけど、もう十分じゃない? 行きましょう?」

「なに言ってるの? コイツにはもっと罰が必要なのよ。わたし、セレーナ様から聞いたの。あの方が、ベアトリスからひどい仕打ちを受け続けて苦しんだってね。だからコイツはもっともっと苦しむべき。追放だけじゃ生ぬるいわ!」

 歪な笑みを浮かべた少女が、一歩、また一歩と近づいてくる。

 ベアトリスは身の危険を感じて、退路を確認しながら後ずさりをした。

「悪女に正義の鉄槌を下すべきよ──!」

 逃げようと(きびす)を返すが、それより早く少女に腕を掴まれた。
 そのままギリギリとひねりあげられ、ベアトリスは痛みに(うめ)く。

(この異様な力の強さは……身体強化の聖魔法!)