【書籍1巻発売&コミカライズ進行中】悪女の汚名返上いたします!

 たしかに、ベアトリスはかつて彼女に不合格を言い渡した。
 
 だが、それには歴とした理由がある。

 孤児院での慰問を兼ねた研修試験の際、彼女たちは「やだ汚い、触りたくないわ。変な病気をもらったら困るもの」と、子供に平然と言ってのけたのだ。

 試験官をしていたベアトリスは偶然それを聞いてしまい、彼女たちの人物評価を大幅に減点した。

「貴女のせいで、わたしたちは聖女になれず、今も見習いのまま。あの時の屈辱は絶対に忘れない」

(試験に落ちたのは自業自得でしょう。私を恨むのはお門違いだわ)
 
 ──というベアトリスの言葉は、少女たちの突然の暴挙により遮られた。

 彼女たちは、物干し竿にかけられていた洗濯物を掴むと、勢いよく地面に叩きつけ楽しそうに踏みつける。
 
 苦労して洗ったばかりの衣服がどんどんと泥にまみれていく……。
 
 ベアトリスはたまらず「やめなさい!」と叫んだ。

 すると少女たちがぴたりと足踏みを止め、(さげす)むような視線を向けてくる。

「やめなさい? 奴隷の貴女にそんなこと言う資格ないわ。聖女になれず、わたしたちがどれほど屈辱的な日々を過ごしているか、今日はたっぷりと思い知らせてあげる」