【書籍1巻発売&コミカライズ進行中】悪女の汚名返上いたします!

 明らかに体調が悪いと分かっているくせに、看守は容赦なく「早く洗濯の仕事に戻れ」と命令してきた。
 
「おい、なにしている! さては、仮病を使ってサボろうとしているな。さっさと戻れ!」

「ちょいと待ってくださいな。聖女先生の顔が真っ青じゃよ。少し休ませてやらんと死んじまう。そんなことになったら、お役人さんも困るじゃろう?」

 老人の指摘に看守はしばし考え込んだ後「仕方ないな」と呟いた。さすがに死なれてはマズイと思ったのだろう。

「休憩をくれてやる。ただし、十五分だけだぞ」

 そう言って看守は救護室から出ていった。

「こんな若いお嬢ちゃんが強制労働させられるなんて、ひどい世の中じゃな。ほれ、飴ちゃんだよ。これでも食べて元気を出しなさい」

 たとえ飴ひとつでも、物資の乏しいこの施設では菓子は貴重だ。いったいどこで手に入れたのだろう。

 そう不思議に思っていると、バッカスと名乗った老人は「あぁ、それはね」と出処(でどころ)を話し始めた。

「聖女さん方がくれたんじゃよ。施しだって言っての」

「聖女……」

 そういえば、昨日から聖女見習いの一団がこの施設に滞在しているらしい。