「いったたた……久々の再会だっていうのに、兄に対してこの仕打ちは酷いじゃないかぁ! 僕のハグを受け止めたまえよ」

「お久しぶりです、兄上。相変わらず騒がしい、いえ、お元気そうでなによりです」
 
「今、騒がしいって言ったよな?」

「いいえ、お元気そうだなと」

「いいや。ちゃんと聞こえたよ、僕は地獄耳だからね」

 黒髪の長髪を後ろで結わえた美青年は、ぶつけて赤くなった額を押さえながら、ハハッと笑ってベアトリスに片手を差し出した。
 
「やぁ、ベアトリス嬢。わたしはブレア伯爵家の現当主で、ユーリスの兄のルーカスだ。ようこそ、我がブレア領の隠れ里へ」

「初めまして、ベアトリス・バレリーと申します。この度は、ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございません」
 
「いやいや、そんなに恐縮しないで。それに僕たち、会うのは初めてじゃないしね」

「え、そうなんですか?」

「そうだよ。といっても、僕たちが会ったのは、君がヨチヨチ歩きの頃だから覚えていないだろうけど。さあ、廊下は寒いだろう。まずは中へどうぞ」