ユーリスに案内され、ベアトリスがたどり着いたのは、ブレア領内にある森の中の邸宅だった。
 
「さあ、どうぞ」
 
 冬にはまだ早いが、秋風が寒々しいこの季節。
 屋敷内は暖炉の火で温められており、身も心もホッと癒される。
 
 燕尾服を着た執事が出迎えに現れ「おかえりなさいませ」と恭しく頭を下げた。
 
「先ほど旦那様もお見えになりました。居間でお待ちでございます」
 
「分かった。俺は兄と会うから、彼女をを客間に案内してくれ」

「かしこまりました」

「ユーリス、私も先にブレア伯爵にご挨拶がしたいわ。いいかしら?」

「君が良いなら、もちろん」

「ありがとう」
 
 廊下を進み、ユーリスが居間の扉を開けた直後、背の高い男性が両手を広げ「ユゥゥウリスゥーウ!」と突進してきた。

 ユーリスは素早くベアトリスの身体を抱き寄せ、ひらりと身をかわす。
 突撃してきた男性はそのまま勢い余ってドンッと廊下の壁に激突した。