フェルナンの言葉に、ベアトリスは満面の笑顔を浮かべた。

「ああ、だが、くれぐれも周囲に身代わりだと見破られないように、細心の注意を払うのだぞ」

「はい、かしこまりました! ありがとうございます、殿下」

 素直にお礼を言うと、フェルナンはやや面食らった様子で黙り込んだ。
 
 そして「ふん、なかなか()い顔をするではないか」と呟いたのだが、念願の外出に喜ぶベアトリスには聞こえていなかった──。

 
 鼻歌を歌いながら聖女ローブを羽織る。
 
 ご機嫌なベアトリスに、ユーリスも「良かったですね」と優しげな微笑を浮かべた。

「うん、ホントに良かったわ。このまま幽閉されていたら病んじゃうところだったもの」

(──というのは嘘だけど。軟禁程度じゃ、私は全然へこたれないわよ)

 恩赦を与えられたとしても、世間から見れば自分は元罪人。身代わりを終えたら二度と王宮や神殿に立ち入ることできないだろう。
 
 護衛騎士に監視されているため行動は制限されるが、今のうちに貴重な書物や記録を読んだり、それとなく呪具事件の聞き込みをしてみよう。
 
 
(行動開始よ──!)