『視察の日まで、部屋から一歩も出ずに大人しくしていろ』

 フェルナンにそう命じられ、私室に閉じ込められて早数日。

(このまま幽閉されていたら、情報収集できないわ。なんとかして外出禁止令を突破しなきゃ)

 ベアトリスは瞳を潤ませ、か弱い乙女を演じてユーリスに泣きついた。

「うぅっ……このまま閉じ込められていたらノイローゼになりそうだわ……お願い、助けて、ユーリス……」

 上目遣いで懇願すると、ユーリスは珍しく狼狽えた様子で答えた。
 
「わ、分かりましたから、泣かないでください。殿下に掛け合ってみます」

「ほんと!? ありがとう、ユーリス!」

 ほどなくして、ユーリスがフェルナンを連れて部屋に戻ってきた。

 「ヒマ、ヒマ、ヒマ」とブツブツ呟きながら落ち着きなく歩き回るベアトリスを見て、フェルナンが驚愕の面持ちでユーリスに問いかける。

「あいつは、どうしたんだ?」

「軟禁生活で精神的にかなり参っているようです。どうか外出の許可をお与えください。このままでは発狂しかねません」

「あの奇行、ただ事ではないな。頭がおかしくなっては困る。……致し方ない、外出を許可する。セレーナの名代として聖女の公務に復帰せよ!」

「よろしいのですか!?」