【書籍1巻発売&コミカライズ進行中】悪女の汚名返上いたします!

 セレーナは教育係に軽く注意されるたび「すみません……」と言って泣き出し、一向に王妃教育は進まない。

 さらに毒虫事件以降、「誰かに見られている気がする」や「窓の外に人影があった」などと言い、過剰に怯えて公務も欠席しがちになってしまった。

 王太子妃になれば、今以上の過酷な日々が待っている。

 なにを言われても笑顔を絶やさず毅然と振る舞う。
 王族とは、そういったある種の図太さが要求される役目である。

(図太さでいえば、ベアトリスの方が適任だったわね。まぁ、あれはあれで、かわいげのない娘だったけれど)

 とにかく、気弱なセレーナに未来の王妃の役目が務まるとは、到底思えなかった。

(このままでは、フェルナンも、そしてなによりセレーナ自身も不幸だわ。わたくしが悪役になって、すべてを終わらせてあげなければ)


 そして迎えた期限の日。
 王妃はセレーナとフェルナンを自室に呼びつけた。

「それでは約束を果たして頂戴」

「はい、王妃様」

 てっきり「すみません、無理でした……」という返答を予想していた王妃は、意外な返事に面食らう。

 絶句する王妃の前で、セレーナは騎士たちに目配せして「彼女をここへ」と命じた。

(まさか、本当に犯人を捕まえたというの……?)

 一旦退室した騎士が、ひとりの女性を連れて戻ってくる。
 驚愕する王妃に、セレーナは別人かと思うほど毅然とした態度で告げた。

 
「この者が、毒虫事件の犯人です」