「ごめんね、お待たせ」

「なんかあった?」

「ううん、りりが忘れ物ないかチェックするのを忘れてて」

多分何も知らない赤羽くんに適当に誤魔化していると、予定していたバスが来た。

「あ、あれだよね。乗ろうか」

白々しい一条くんの言葉でバスに乗った私たちは、りりと赤羽くん、私と一条くんで隣同士になって乗る。

「篠原さん、葛西さんと隣じゃなくていいの?」

「私、ちょっと一条くんに聞きたいことがあって。良かったら赤羽くんはりりとのってもらっていい?」

「あ、そう?おっけー、お邪魔するね葛西さん」

「え、あ、どうぞどうぞ!」

隣で笑い合う2人は初々しいカップルのよう。
一方で私は、隣の妙にニコニコした男を睨みつけた。

「りりを丸め込むなんて」

「ごめんね、2人の時間を邪魔しちゃって。どうしても一緒に回りたくてさ」

私の睨みなんか微塵も気にしてないらしく、一条くんはにこっと笑った。

それを見てはあ、とため息が溢れる。
やっぱりこの男、食えない。

「でもよく了承したね?」

「りりが赤羽くんと近づけるチャンス、しかも一生に一度の修学旅行。私が断らないってこともお見通しでしょう?」

「バレたか」

「……ちっ」

「えー、舌打ちしないでよ。僕結構ショックなんだけど」

その割には全然ダメージがなさそうだけど。

……むかつく。けど落ち着け私。相手にこれ以上ペースを乱されるな。

私はちらり、と流し目で一条日陽を見る。

「りりたちの邪魔しないってことは不本意ながら貴方と一緒にいることが多そうね」

「うん、それが狙い」