数か月前から桐生組が請け負っている開発事業で、以前そのシマを持っていた金田(かねだ)組が、膨大な額の吸い上げをしている事実を突き止めた。

桐生組は極道であってもクリーンな組織(会社)
通常、極道はショバ代を回収したりして資金を得ているが、桐生組は一般企業と同じで、カタギ相手に商売している。
だから、極道であっても、ショバ代を取るということを禁止していて、それは傘下に入る組にも倣わせているのだが。

昔ながらのやり方が抜けない組は、未だにアコギなシノギをしているのが現状。
それらを取り締まるのも桐生組のシノギなのだ。

「それから別件の方も、二十四時間体制で指示してあります」
「助かる」

仁はほんの少し安堵の表情を浮かべた。

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「そろそろ、休まれては……?」
「あぁ、もうそんな時間か」

黒川に声をかけられ、パソコンから顔を上げた。

六月は上半期の決算月ということもあって多忙なうえ、日中学校に行っているお陰で仕事は溜まる一方。
黒川を始め、社員がある程度の量の仕事をこなしてくれているとはいえ、決済は仁の仕事。
毎日決済書類などが机の上に山積みされている。

「ご自宅までお送りします」
「悪いな」

鉄は二十一時に帰宅させている。
学業もさることながら、毎日トレーニングを欠かさずしているからだ。

深夜零時過ぎ、黒川の運転する車が自宅前に到着した。

「明日は九時前に迎えに来てくれ」
「学校は宜しいのですか?」
「あぁ、暫く休むと連絡済みだ」
「承知しました。では、九時前にお迎えに上がります」