悪戯が成功したみたいなしたり顔をしながら、スッと差し出される手。

「ん」
「……っっ」

ここは学校で、教室内にいるクラスメイトがじーっと見ているってのに。
彼は甘えるみたいに手を握ってと態度で示して来る。

でも、どうしてだろう。
嫌だとは思えない。

『許婚』だと擦りこまれているからなのか。
いつでも私には紳士的だからなのか。
彼の差し出された手を掴んでもいいかな、だなんて思ってしまった。

恥ずかしくてまじまじと見れないけれど。
窓下の壁に隠れてる彼の横に立つようにして、クラスメイトの視線から逃れ、そっと彼の手を掴んだ。

私より僅かに高い体温。
あちこちにマメみたいなものができていて、ごつごつとした感触。

「小春、今度いつ来る?」
「え?……あっ」

GWにお邪魔して以来、彼の家に行ってない。
いつも詠ちゃんと登下校していて、彼は鉄二さんと登下校している。
というより、彼は学校が終わると、家業である不動産と建設業の仕事をしているらしい。
『夜遅くまで仕事をしている』と鉄二さんから聞いている。
なのに、学年一位。
本当に勉強ができる人なんだなぁと思った。

「呼んで下されば、いつでも」
「えっ……マジで?」
「……はい」
「じゃあ、今日」
「え、お仕事は?」
「仕事なんてどうにでもなる」
「無理しなくて大丈夫ですよ」
「無理なんかじゃねーよ。ってか、小春は最優先事項だろ」
「っっ……」

にかっと無邪気に笑う彼。
私の承諾が嬉しかったのか、ぎゅっと手を握り返して来た。