翌日。

「芽結、おはよ」

朝のホームルーム前、登校してきた凪音くんが私の席の近くを通りかかった際、サラッと朝の挨拶をしてくれた。

「あ、凪音くん。おはよう」

私もそんな彼に対して、まだ慣れない名前呼びをし、小さな声で挨拶を返す。

ホームルームが始まるまでの間、私の前の席に座って一緒に話しをしていた胡桃ちゃんが突然の名前呼びに驚いたのかあんぐり口を開けて私と凪音くんを交互に見つめていた。




「ちょ、ちょっと待って!?芽結ってば何なのさっきの!?私、聞いてないわよ?筧といつの間に急接近しちゃったのさ」

ホームルーム終了後、1限目は体育。

私と胡桃ちゃんは更衣室へと移動する廊下を隣同士で歩いている。

ガヤガヤと移動していく他のクラスメイトに紛れて、彼女は私の腕をとり、声を潜めつつも質問攻めだ。

「ねぇねぇ…!」と、鼻息荒く詰め寄る胡桃ちゃんに私は苦笑いを浮かべる。

このままじゃ説明するまで彼女から解放されそうにない。

そう悟った私は、とりあえず昨日の階段での凪音くんとの経緯を説明する。

「ふーん?なるほどね〜」

私の話しを聞き終ると、ようやく冷静さを取り戻した胡桃ちゃんに内心ホッと安堵した。