「おかえり。ねえ見て、ゴールデンウィークに花奈さんと言ったお店、SNSに上げたら過去一いいね貰えた」


 教室で待っててくれた咲楽は、嬉しそうにスマホの画面を見せてくる。


 正直、今はそんな気分になれなくて、私は咲楽の席の後ろに座り、机に突っ伏した。


「ん? どうした?」


 咲楽に聞かれ、さっきの夏川先輩の表情を思い出す。


『正しすぎる言葉は、ときに他人を傷付けるんだよ』


 夏川先輩は、悲しそうだった。


 あれは、戸惑いだろうか。

 それとも、失望か。


 なんにせよ、あまりいい感情を向けられたとは思えない。


「……夏川先輩に嫌われたかも」


 言葉にすると、辛さが増す。


「依澄が? 夏川栄治に?」


 咲楽の意外そうな声を聞きながら、身体を起こす。


 大きく息を吐き出して、両手で顔を覆う。


「もう、なんで私、いつも言いすぎるんだろう。いつまで経っても学習しない自分が嫌い」


 今回と似たような失敗は、いくつかある。


 そのたびに後悔して、次は気を付けようって思うのに、なかなか上手くいかない。


 何度も同じことを繰り返す自分に嫌気がさすし、なにより夏川先輩の前でやらかしてしまったのが、ダメージが大きい。