「依澄ちゃん、今日、かき氷食べに行かない? すごく美味しそうなお店、見つけたの」


 期末テストが終わって、帰りの支度をしていると、詩織ちゃんが満面の笑みでやって来た。


「咲楽ちゃんと由紀ちゃんは行くって。依澄ちゃんはどう?」
「ごめん、今日は先約があって」


 私が言うと、詩織ちゃんの眉尻は綺麗に下がった。


 申しわけない気持ちと、嬉しい気持ちが同時に芽生える。


「また今度、誘ってね」
「次も彼氏を優先しそうだけどね」


 詩織ちゃんの後ろから、意地悪な声がした。


 由紀も咲楽も、まるで悪役のような笑みをしている。


 約束の相手は言っていない。


 それなのにわかったのは、私たちの告白シーンが学校中で噂になってしまったから。


 お陰様で、私たちは全校生徒公認のカップルだ。


「……しないよ」
「どうだか」


 咲楽たちは顔を見合わせる。


 この二人は似た者同士みたいで、私からしてみれば、仲良くなってほしくない二人だった。


 すると、落ち込んでいた詩織ちゃんは、笑顔に戻った。


「依澄ちゃん、デート楽しんできてね」


 嫌味のない言葉を言ってくれるのは、詩織ちゃんだけだ。