その表情は、僕が古賀のことをどう思っているのか、知っているように見える。


「さっきも似たようなこと、言ってたよね? 僕、そんなにわかりやすい?」
「だって、依澄を見る目だけ違うもん」


 さすがに、その指摘は恥ずかしい。


「あと、自分でも言ってたでしょ。依澄が好きだから、励ましたいって」
「そう……だったね」


 古賀の過去を聞いたとき、そんな会話をしたことを思い出した。


「依澄に言わないの?」
「古賀がなにか頑張ろうとしているなら、今は多分、僕の気持ちは邪魔になる。だから言わないよ」


 自分から振っておきながら、興味なさそうな返事が返ってくる。


「夏川君! 今日はどの部活に行く予定?」


 会話のキャッチボールが上手くいかなくなって、どうしようかと悩んでいたら、頭上から叫び声が聞こえてきた。


 見上げると、七瀬さんが窓から乗り出している。


「……バスケ部!」


 迷ったけど、まんまと氷野の誘い文句に乗ってしまった。


「わかった!」


 七瀬さんはすぐに見えなくなる。


 そのやり取りを聞いていた氷野は、ニヤニヤと笑っている。


「……古賀には僕からちゃんと言うから、絶対言わないでよ」
「わかってますよ、夏川センパイ」


 氷野の嫌な笑みに見送られながら、僕は体育館に向かった。