「……そういうわけで、僕は去年の文化祭辺りから、写真を撮るのが怖くて、避けてたんだ」


 夏川先輩がどうして写真を撮らなくなったのかを聞いて、私は言葉が見つからなかった。


 お互いに無言になってしまって、遠くから聞こえてくる声援が、やけに大きく聞こえた。


「ごめん、こんな話されても困るよね。でも、古賀には言わないと、というか、知っておいてほしいって思ったんだ」


 すると、先輩は申しわけなさそうに笑った。


 それが見ていられなくて、私は足元を見る。


 自分の周りから人が離れていく怖さ。

 好きなことを、好きなようにできないつらさ。

 それは、私もよく知る感覚と同じだと思った。


 だからこそ、写真を見たいというわがままが、どれだけ夏川先輩を苦しめていたのかがわかってしまう。


「私……先輩の気持ちも考えないで、写真を撮って見せてほしいって何度も言って、ごめんなさい……」


 もっとちゃんと、先輩の表情変化に気付けていたら、先輩を苦しめることなんて、なかったのかもしれない。


 どうして私は、相手のことを見て、話すことができないのだろう。


 自分の欲のままに、突っ走ってしまったのだろう。


 そんな後悔しか出てこない。


「たしかに、最初はイヤだったよ。一回断ったんだし、はやく諦めてほしいって思ってた」