部室に入ってすぐ見つける事ができ、ほっと安堵の息を吐く。

 誰かに触られた形跡もなさそうだし、これで帰れるや……。

 そう思って踵を返した時。

「谺くーん、お疲れ様ーっ!」

 異常に、“谺君”という単語に反応してしまう。

 窓の外から聞こえてきた声は、グラウンドからのもののようで。

 その声の場所には、なんとも可愛らしい女の子が谺君に水を手渡していた。

 ……谺君、陸上部なんだ。

 なんて考えている時も、女の子は谺君に声をかけていた。

「ねぇ、どーして水飲まないの? あたし、心配なんだよ? このままじゃ谺君、ぶっ倒れるよ?」

「……別に、水なんか要らないから。」

「えー、冷たーい。」

 谺君、なんだか様子が違う……?

 直感的にそう思ってしまい、どうしてか視線を逸らした。

 あの女の子と話してる時の谺君、ちょっとだけ慣れてるみたいだった……。

 私はまだ谺君のこと何にも知らないから、何にも言えないけど……なんとなく、感じた。

 他の女の子と話すのと、雰囲気が違うな――……って。