「紗梛様、背中が猫背ですよ!」


 この人は、マナー講師で今は夜会の時期に間に合うように教わっている。だが、慣れていない洋装に疲れて気味だった。


「で、でも! これ、転びそうなんだもの……っ!」

「ですが、猫背のままだと癖がついてしまうのでまっすぐにしておきましょうね」

「……はい、分かりました……」


 もう、やるしかない。

 夜会というものには、士貴様の同伴で出席することが決まっている。士貴様に迷惑をかけるわけにはいかないから。

 私はやる気を入れて一歩踏み出すと力が入りすぎて着地が上手くできなかったみたいでふらつく。倒れてしまう、と思い体勢を保とうとしたけど慣れないドレスに靴で出来ない……本当に危ないかもと思ったその時、急に背中が支えられる。